コラの方が有名な漫画のシーン5選
誰もがスマホを持って暇さえあればネットに興じているこの情報化社会、いかがお過ごしでしょうか
こういった環境では絶えず情報の波が押し寄せるため、それを処理するのに手一杯で、情報の内容や真偽についてはあまり吟味しない人も多いです
めちゃめちゃ偏向されたまとめブログを真に受けてデマを拡散したり、全然悪くない人を叩いたり、脊髄反射でこういうことをやってしまって後で枕に顔をうずめて布団で足をバタバタしたことがある人もいるでしょう
また、投網みたいなセクシーな上着でサングラスをかけた男性をBLEACHの作者だと思いこんでる人もいるはずです
同じように、コラの方がネット上では有名になってしまった漫画がいくつかありますので今回はそれを紹介していこうと思います
1.一本包丁満太郎「うんこの香りだあーっ!!」
ビッグ錠先生の『一本包丁満太郎』より、ご飯が炊けた時のシーンです。「漫画家も編集も、これが世に出るまでに関わった人は全員句読点というものを知らなかったのか?」という感じでツッコまれることが多いです
この模範的なツッコミからも分かるように、普通の人は「『うん、この香り』ってすればいいだけなのに、昔は印刷までのチェックがザルだったのね」という風に考えるので、そこでコラじゃないと認識してしまい追求を止めてしまいます
まぁそれはごく普通のことで、このシーンを読んで「ふむふむ…鼻腔にたっぷり匂いを吸い込んでから、満面の笑みで『うんこの香りだあーっ!!』と叫ぶ…。これは炊飯器で排泄物を保温して興奮する性癖の持ち主に違いない」と斜め上に読んでしまう人がいたら完全に異常者です
脱線してしまいましたが本題に戻ります。それではオリジナルはどうなっているのでしょうか?『一本包丁満太郎』は電子書籍になっているのでそれを見てみましょう
「うーん
この
香りだあーっ!!」
と改行されているためとても自然な流れになっています
つまり「うーん この」を「うんこの」に変えてゲラゲラ笑うという「まさかいい大人がそんなことやらないだろ…」となる今時小学生でもやらない大胆な犯行をあえてやったことで意表を突いたのと、「こんな時代であればチェックがザルなのもありえるかも…」といった思いが複雑に絡み合ったことで本物よりもコラの方が有名になったのではないでしょうか
「電子書籍化の際に修正されたのでは?」と言う人もいるかもしれませんが、コミックスの初版でも電子書籍と同じですし、また当時の雑誌掲載時も同じようです
一本包丁満太郎「うんこの香りだあーっ!!」がコラ画像かどうかで議論があり、なぜかコミックス初版を確認してしまう人があって気になって仕方ないので掲載誌を国会図書館で見てきました。画像はビジネスジャンプ1985年12月号(当時は月刊)。 pic.twitter.com/nprBXSkKZJ
— cxq05556 (@gutenpost5) 2017年4月22日
この素晴らしい調査をしてくれた方はおそらく無類のビッグ錠マニアなので
「真実が知りたいんなら国会図書館で当時のビジネスジャンプを確認するんだな」
「えっ!?わざわざ国会図書館に行って初出の雑誌でコラかどうか確認を?」
「ははは、まぁ普通の人ならムリだろうね」
「できらあっ!」
というスーパーくいしん坊イズム全開のやりとりをした結果確認しに行ったのだと思います
ちなみにこの『一本包丁満太郎』、いつものビッグ錠先生のノリで奇天烈なキャラクターと異次元の展開がバンバン出てくるため、その手の物好きには超オススメです
ちなみにビッグ錠先生の『一本包丁満太郎』のおにぎり師たちの登場シーン、どう見てもガロン塚本たちの登場シーンと一致じゃないですか? pic.twitter.com/LqdWemCb6I
— ✖♥ワイワイちゃん♥✖ (@subnacchi) 2018年2月17日
ここに出てきた「おにぎり師」という、楽天カードの審査で職業欄に書き込んだら絶対落ちるであろうジョブも強烈ですが、この漫画タイトルに一本包丁とついているくせに包丁を一切持つことなく、1~5巻までおにぎり生産のライン工かと思うくらいずっとおにぎり勝負を続けているのも強烈です
おそらく「一本包丁」は「一本しか持ってない包丁を家に忘れてきたのでやれやれと素手で勝負に挑んでみたら無双してしまった件」というなろう小説チックなタイトルの略だと思います
2.ウルトラ兄弟物語「死なないだろ…多分。」
かたおか徹治先生による『ウルトラ兄弟物語』からです
突然子供を盾にした敵に向かって「死なないだろ…多分。」と高田純次のようないい加減さで攻撃し、案の定スペシウム光線がヒット。そして、こんないい加減だし、自業自得なんだから何も感じないんだろうな…と思ったところに「ぼうやーーっ!」と悲壮感あふれる絶叫。続いて回想終了からの「二度と、あのことはくりかえさせん!」という完全な逆ギレというコンボに度肝を抜かれてしまいます
通常であればこんなサイコパスな正義のヒーローは嫌すぎるので、どう見てもコラなんですが、そうとは判断しづらい理由が存在します
かたおか徹治バージョンのウルトラマンはご覧の通り全てが無理になってストロングゼロをイッキしたり
その様子を見かねて諭しにきた同胞に「どうせおれはだめなウルトラ族さ!」と毒づくなどの、まるで将来の不安と今の境遇のストレスで、ストロングゼロでしか苦痛を紛らわせることができない40代派遣社員のような、かなり破天荒な描写があります
こういうシーンだけを抜き出すとかなりヤバい作品なんじゃないか…と思う人がいるかもしれませんが、実はこれヒーローに挫折した者がそれを乗り越えて真のヒーローになるという成長物語で、意外と普通に面白い作品です
それを踏まえてオリジナルを見てみましょう
うん、これだとサイコパスじゃなくて、ただ単に敵のほうが一枚上手だっただけですね。薄々気付いた人もいるかもしれませんが
「子供を誤って自分の手にかけてしまう」
↓
「それがトラウマになり酒びたりの自暴自棄な日々を送る」
↓
「そのトラウマを乗り越え真のヒーローになる」
という黄金展開をカマしてきてアツいです
良かった!僕らのウルトラマンはサイコパスじゃなかったんだ!と安心してウルトラマン関連のコンテンツを楽しむことができそうです
コラで1箇所セリフを変えるだけで、シリアスなシーンを『ボボボーボ・ボーボボ』や『ギャグマンガ日和』のような不条理系ギャグに変えてしまう魔法のようなコラ師の手法に脱帽してしまった回でした
- 作者: かたおか徹治
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 1998/10
- メディア: コミック
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3.課長島耕作「バッバッバッバッバッ!」
一口もラーメンを食べずにいきなりコショウを鬼のような勢いでかけ始めます。この人、味覚障害かな?と思うのも束の間。苦言を呈する店主に「どこの馬の骨ともしれないお前より有名メーカーのコショウの方が信用できるんだが?」と人の感情を考えないアスペ発言を繰り出します
しかもこの間ずっとコショウはかけっぱなし。最後のコマで店主が「!!」と衝撃を受けていますが、発言の内容に虚を突かれたという訳ではなく、ずっとコショウをバッバッバッとかけてたせいで、日本昔ばなしに出てくる大盛りごはんのようにこんもりとコショウが積み上がっていたからだと思います
という訳でオリジナルを見てみましょう。どれだけの変化が加わっているのか気になるところです
元は課長島耕作シリーズの『係長島耕作』2巻に収録されています。さすがに会話の途中にも関わらず、もこみちのオリーブオイルばりにコショウを贅沢にふりかけるのはコラでした
こちらだと店主が驚いたのも発言に対してだとスムーズに解釈できます。しかし人の心を考えない非道なセリフは全てそのままです
僕のおばあちゃんは農家の人なのですが、もし僕が収穫したばかりの野菜を足で踏みにじりながら「どこの誰が作ったか分からない野菜よりも、カゴメの野菜生活の方が信用できる」とか言ったらボコボコにされると思います
ちなみに単なるアスペババアだと思われがちなこの女性、実は過去にレディースだったという経験があり、周囲の同調圧力に負けずに自分の意見をちゃんと言える豪胆さを表現するエピソードが今回のお話だという種明かしを一応しておきます
4.黒い清涼飲料水「もうエッチされても……いい…」
最初に言っておきますがこのお話は超名作です。怪しげなおじさんが売っているコーラが非常に中毒性があるということでみんなリピーターになり、どんどんその欲求がエスカレートしてまるで禁断症状みたいになり、昼夜を問わず値段にも糸目をつけず飲みたい人が群がるという展開のお話です
そしておじさんがいきなり煙のように消え失せておじさんコーラは買えなくなってしまうのですが、普通のコーラでは考えられない中毒性に「あのコーラには麻薬が入っていたのでは?」「暴力団が裏で糸を引いていたに違いない」などの噂がまことしやかにささやかれるようになります
主人公の女の子も最初は拒否していたけど麻薬に負けてしまったのか「もうエッチ……されても…いい」と堕ちてしまった女騎士のようなセリフを吐いてしまい、正直言って非常にエロいです
それではこのエロい展開はマジなのかオリジナルを見てみましょう。このお話が収録されている本、プレミアがついてて入手が難しかったんですが少し前に電子書籍になったのでそれを見てみます
ってオイ!おじさんはコーラの値段を釣り上げてはいますが、エッチな要求なんか一切してません!一瞬「なんてこった…この胸のトキメキを返してくれ…」と言いそうになりますが、最初にも言った通り超名作なので煩悩なんかどうでもよくなり没頭してしまいます
そして「麻薬入りコーラ」という噂は真実ではなく、実はもっとヤバいものが混ぜられていたことだけお伝えしておきます
このおじさんコーラこと『黒い清涼飲料水』が収録されている呪みちる先生の『口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~』ですが、都市伝説をベースにした本格ホラーのお話と、呪みちる先生の持ち味である奇想を堪能できるタイプのお話が入っていて入門用には最適だと思います。ホラー好きでまだ読んだことない人にはぜひオススメです
無料でwebで読めるものとしては
エクストリームマンガ学園020 呪みちる 七色の脳みそ
などがありますので気になった方はチェックしてみて下さい
5.キルミーベイベー「ババーン」
お、面白い…
まずキルミーベイベーを知っている人はこう思うはずです
「この異様なスピード感…!キルミーベイベーにしては面白すぎるしコラか???」と。そして心ない人の中には「キルミーで初めて笑ったわ」などとコメントする人もいると思います
確かに原作やアニメとは全然違うセンスの笑いにコラではないかという疑念が晴れません
さっそくオリジナルを確認してみましょう。この回は5巻に収録されています
オリジナルを見れば納得「これこそがキルミーベイベだわ」となる完璧なカズホテイストです。ちなみにこれがオチではなく、漫画全体は4コマ×4の合計16コマで、一番最後にきちんとやすなが地面に埋められます
「その挟んだコマ、面白くなってないし正直ジャマじゃね?」と言い出す心ない人もいるかと思いますが、そもそもキルミーベイベーはきらら系のコミックで、きらら系の作品の傾向は可愛い女の子たちが何の変哲もない日常を送るような内容がほとんどです
ターゲットとしてる読者は仕事などで疲弊し、癒やしを渇望しているオタクたち。少しでも刺激を与えると、すぐに泣き出してうつ状態に陥る可能性が高く、内容に関してはちょっとの刺激で爆発するニトログリセリンを輸送する時のように、慎重に取り扱わなければいけません
なので、コラのようにコマをカットして異様な疾走感を与えるとシュールギャグのような変貌を遂げてしまい、心弱きオタクたちに傷を与えてしまう確率が高まります。面白すぎるというのは逆効果なのです。なのでほのぼの感を残しつつクスリと笑えるという絶妙なバランスはこの状況では完璧な仕事だと思います。キルミーベイベー最高!
おわりに
という訳で今回はコラの方が有名になっている漫画について書いてみました。もしかしたらあなたが「これウケるなw」とSNSでシェアしようとしている画像はひょっとしたらコラ画像なのかもしれません…
と、怪談の締めのような感じになってしまいましたがぜひまた次の記事でお会いしましょう