超絶表現のグルメ漫画、さぼリーマン飴谷甘太朗を君は読んだか?
百花繚乱のグルメ漫画
今はグルメ漫画戦国時代。あらゆる雑誌で食をテーマにした漫画が連載されています。学校で、職場でそして異世界で、サラリーマンが、女子高生が、そしてエルフや女騎士が食べて食べて食べまくる、そんな時代になっています。クレヨンしんちゃんの野原ひろしやカイジのトネガワやハンチョウもこの流れには逆らえないようです
そういったたくさんあるグルメ漫画の中で異彩を放つ、『さぼリーマン 飴谷甘太朗』を紹介していきたいと思います。ちなみにこのマンガの原作の方はトネガワとハンチョウの原作も担当してらっしゃる萩原天晴さんです
主人公はクール系メガネ男子。外回りの営業の仕事なのですが、きっちり仕事をした後の余った時間でスイーツ探索(つまりサボり)に勤しむというナイスガイです。まずは百聞は一見にしかず、度肝を抜かれたシーンを見ていきましょう
これを見てもらえば分かる通りとてつもなくシュールです。おしるこに口をつけたとたん滝に打たれる修行僧のように頭から汁が降り注ぎ、その後スライムに捕食されて消化された人みたいに跡形も無く消えてしまいます。残ったのはおしるこで作られた主人公の顔。この表現を見た時シュールすぎて度肝を抜かれました。欠点を言えばうまいのかまずいのかよくわからないところです。ちなみに主人公のメガネが餅で表現されるという小ネタが挟まっているのが地味に好きなポイントです
孤独のグルメなどのように落ち着いた感じでおいしさを表現するリアル系や、逆に「こいつメシに媚薬でも盛られてんのか?」と思うくらい恍惚とした表情でおいしさを表現するオーバーリアクション系、幅はありますが食べた当人のリアクションで表現したりするのが今の主流だと思います。そしてこれは食戟のソーマなんかに近い、食べた人の心象風景を全力で表現するファンタジスタ系のグルメ漫画です
心象風景タイプの表現のはじまり
食べた人の心象風景でおいしさを表現するのはおそらくアニメ版のミスター味っ子が源流の1つになっていると思います
とにかく表現がオーバーで、基本的に料理は光を放っています
また、料理がうまい場合はとりあえず口からビームを出します
時にはマーライオンのように水を勢い良く出します
とにかくビームを放つグルメアニメですが、この作品の監督はロボットアニメ界の重鎮である今川泰宏監督。演出がブッ飛んでいることで有名な人ですが、おそらくロボットアニメ的なセンスでグルメ漫画を表現してしまったのでビームが頻繁に放たれることになったのでしょう
他にも
料理を食べた人がスターを取ったマリオになったかのように光り、穴という穴からビームを出しています
どう見ても薬物使用の疑いがある、回転寿司のレーンが七色に光る表現です。東南アジアに入り浸るバックパッカーが焦点の合わない目で「この前回転寿司に入ったら七色の寿司が流れててさ~」とか言ってそうです
そして食べた人は寿司でサーフィンを始めますたぶんこれを読んでいる人は意味が分からないと思いますが大丈夫です。僕もよくわかりません
また、料理のうまさに空中浮遊しながら移動し、メシをかっこむシーンもあります。ダルシムや麻原彰晃レベルの大道芸です
最後はやっぱりビーム。大阪城が浮遊&崩壊して和風のラピュタみたいになっています
そこから大阪城が急に巨大な人型に変身。原作がグルメ漫画であることを忘れて完全にロボットアニメになっています
とまぁこんなシーンがいっぱいありすぎて紹介だけでブログ2~3記事になってしまうのでこれでやめておきますが、こういったグルメ漫画でのブッ飛んだ心象風景の表現のルーツはここらへんにあると思います
シュールさに全振りした心象風景の表現
という訳でまたさぼリーマン 飴谷甘太郎の話に戻ってくるのですが、こちらの漫画も負けていません。それどころかシュールさに関しては他の追随を許さないパワーがあります
主人公がきんつばを食べた時のシーンです。相変わらずうまいのかまずいのかよくわからないですがきんつばを通過して自分自身がきんつばになってしまいます。超絶シュールですが、つまりオタクが言う「きんつばがうますぎて完全にきんつばと化したw」みたいな感じだと思います
いちごミルク金時白玉の回ですね。口にした瞬間いちごと小豆と白玉がスイーツを使ってカーリングを始めます。たぶんこの左の文章、画像を見ずに読んだら「????」と混乱してしまうと思います。ちなみに他では見ないタイプのこのシュールさ、マグリットやダリあたりの影響もあると思いますので貼っておきます
シュルレアリスムの代表的な画家であるマグリットも後世日本のグルメ漫画に影響を与えるとは思っていなかったでしょう
そしてさぼリーマン 飴谷甘太朗は言語センスも抜群です
肉付きのいいイチゴを「いい筋肉」と表現するこの斜め上のセンス。これはバキで恋人への消えない思いを「歯痛」と表現した時以来の斜め上っぷりです。この特殊な言語感覚からもうまいのかまずいのかさっぱりわかりません
ちなみにバキのシーンはこれです。ロマンティックさがマイナスに振り切ってるセリフに「うれしい……」と応えるヒロイン。完全に脳筋系のバカップルです
他にもこの「究極完全パウンドケーキ待機状態」など、どう考えても一生やらないであろうアクロバティックなポーズなのに「うん…確かにこの格好は究極に完全にパウンドケーキを待ってるポーズだ…」と納得してしまう言葉のパワーがあります
このページなんかはキレたフレーズの玉手箱みたいなものですね。全ての言葉が冴え渡っています。この中だと「レッツゴー大納言…!!!」がお気に入りで、僕自身もあんぱんとかを食べる時に別に大納言あずきじゃないのに使ってしまいます
おわりに
と、まぁこのように素晴らしいセンスで超絶シュールな心象風景を描いたナイスなグルメ漫画『さぼリーマン 飴谷甘太朗』ですが、残念なことに既に連載は終了しています(未見ですが今ドラマもやってるようです)
ただ、全2巻なので、サクッと読めますし何よりこの記事で紹介したシーンはごく一部なので本編のめくるめくシュールなグルメ世界をぜひ味わって欲しいですね
それにこのシュールな部分が無かったとしても主人公のキャラがめちゃめちゃ立ってますし、コメディタッチで描かれる人間模様もいい感じで普通に漫画として面白いです。また作中で出てくるスイーツは全て実在するものなのでグルメガイドとしても使えるという実用的な一品です。
甘太郎と同じものを食べて「レッツゴー大納言…!!!」と呟けばあなたの意識もすぐに亜空間へ旅立つことができるでしょう
ではまた次の記事でお会いしましょう